さて、大会紹介編に続いて、実際のレースレポートです。
今年はUCIワールドチーム5チーム、UCIプロコンチネンタルチーム2チームを含む、全15チーム73名の選手がスタートラインについた。
スタート前には談笑するハース、カンチェラーラの姿も。
午前10時、宇都宮市の佐藤栄一市長の号砲でスタートが切られると、スタート直後の1周目の古賀志林道の登りで、チーム右京の土井雪広が宣言通りの逃げアタック。
地元栃木の宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、その他、チーム・ノボ・ノルディスク、アタック・チーム・ガスト、マトリックス・パワータグのコンチネンタルチームの選手がこれに反応し7名の逃げグループを形成された。
メイン集団はこれを容認し、最初の古賀志山頂までに1分15秒のリードを築いた。
レース前のインタビューで目標は『もちろん優勝』と即答した注目の新城幸也は、普段所属するユーロップカーのチームメイトボクレールの指定席メイン集団の最後尾からレースを進める。
2周目の古賀志の下りで落車が発生しNIPPO・ヴィーニ・ファンティーニのダミアーノ・クネゴ、ジャコーモ・ベルラートがともに負傷により早々とリタイアとなってしまった。
クネゴは裂傷と擦過傷、ベルラートは前腕に添え木を当てられ骨折の疑いで、共に救急車で搬送された。
心配して様子を見に来た(?)J SPORTSサイクルロードレース中継でお馴染みの『我らワールド』のお二人をパシャり!!
そんな中でも、快くキメポーズに応じてくださいました!!
UCIワールドチームには特に動きがなく、集団先頭をトレックのポポビッチ、カンチェラーラ、スカイのアイゼルがコントロールし淡々と進む。
3周、6周、9周、12周の古賀志林道頂上に山岳賞が設定され、1回目の山岳賞は逃げグループからガストのシェパードと宇都宮ブリッツェンの青柳憲輝がアタック。
青柳が1つ目の山岳賞を獲得した。
6周目、2回目の山岳賞は、ガストのシェパードとマトリックスの安原大貴の争いとなるが、ここはシェパードが制して2つ目の山岳賞を獲得。そのまま単独で逃げ30秒ほどのリードを築く。
大きな動きはなくレースは進み、7周目の古賀志林道登りでディフェンディングチャンピオンであるキャノンデール・ガーミンのネイサン・ハースが遅れてしまう。
レース間隔が空いていたためか、コンディションが良くなかったと思われ、残念ながら8周目でリタイアとなってしまった。
9周目3つ目の山岳賞は逃げるシェパードが再び獲得。
10周目、シェパードが追走に吸収され、逃げグループは5名にとなる。
メイン集団ではワールドチームのトレック、スカイ、ランプレが引いて徐々にペースアップ。
田野町交差点を曲がった後の長い緩やかな登りでカンチェラーラが遅れる、結局こちらも10周目を走りきったところでリタイアとなった。
ハースにしても、カンチェラーラにしても、ジャパンカップは欧州でのシーズン終了後の日程のため調整不足は否めない中、来日して出走しているので、リタイアは致し方ないと思うし、その走りを見ることが出来ただけでも多くのファンの記憶に残ったことだろう。
もちろん絶好のコンディションで見ることが出来ればそれが一番うれしいけれど、レースカテゴリーからしてもそれは難しいのが現状なのだろう。。
カンチェラーラはリタイア後も選手控えエリアからトレックブースに移動し、ファンサービスをしてくれており、リタイア自体は残念な結果であったが、ファンはきっと満足出来たのではないかなと思う。
古賀志林道頂上を進むメイン集団。
レースは、10周目の後半で宇都宮ブリッツェンが組織立った仕掛けでメイン集団から抜け出しを図り、これにブリヂストン・アンカー、愛三工業レーシングの選手が続き、
追走グループが形成された。
追走グループは11周目の古賀志林道頂上で、逃げる4名との差を23秒まで縮めるが、そのすぐ後ろにランプレが引くメイン集団が迫る。
古賀志の下りを終えて、県道に入ったところで逃げグループと合流するも、12周目の古賀志林道の登りで徐々にこのグループもバラけ、先頭はブリヂストンの初山と
ブリッツェンの増田だけとなる。
そして、ランプレのポランの強力な引きにより、ついにメイン集団が古賀志林道山頂で逃げる前の2名を捉えるが、何とかブリヂストンの初山が先頭で頂上を通過し最後の山岳賞は獲得。
古賀志を下り、県道に入ったところでアタックを仕掛けて集団を抜けだそうという動きが発生。動いたのはキャノンデール、ランプレ、スカイ、BMCのワールドチームの選手。
キャノンデールのモホリッチとNIPPOの山本元喜が抜け出す。
残り2周となったところで逃げる2名とメイン集団の差は17秒。
ランプレ、スカイの引く先頭に新城があがる。
集団も古賀志の登りでバラけ、ランプレのウリッシとポラン、スカイのエナオ・ゴメス、トレックのモレマと日本ナショナルチームの新城幸也が残る。
その後下りで追いついた選手を含めて9名の先頭集団となる。
この中で、ランプレとスカイが2名選手を送り込んでおり、数的有利な状況を作り出す。
最終周回手前、数で優位に立つランプレが仕掛け、抜け出しを図るが、ここは他の選手もついていく。
最終周回に入ったところで、トレックのモレマが脚を攣った様なしぐさをみせ、先頭集団の最後尾に下がってしまい、古賀志の登りになったところで、
再び脚が攣った様なしぐさをみせるも、脚を叩きなんとか回復しながら遅れずについていく。
先頭でウリッシが仕掛けた際、隊列の最後尾にいた新城は間の選手の影響で反応がやや遅れ離されてしまうが、ペースをあげてなんとか持ち堪え、
最後の古賀志頂上を先頭で通過したのはウリッシ、それに続くのは脚が攣ったとは思えない走りをみせるモレマ、3番手にエナオ・ゴメス、さらに10秒遅れて新城が通過した。
下りでペースをあげた新城が前の3名に追いつき、残り5kmを迎える。
田野町の交差点を右折し、登りにかかったところでウリッシがアタック。
モレマ、新城がついていくが、エナオ・ゴメスはここで遅れ、3名に絞られるが、ランプレのポランが追走集団からジャンプし先頭を引く。
新城は4名の最後尾の位置でラスト1.5km。
残り1kmでさらにBMCのゲルツが追いつき先頭は5名に。
残り500mでプランの引きでペースアップすると、残り300mを切ったところでBMCのゲルツが仕掛ける。
ポラン以外の3名はそれに反応。最終コーナーを迎える。
緩い左コーナーの最終コーナーを先頭で回ったのはゲルツ。
インからウリッシ、ゲルツの後ろからその外側に出したのがモレマ、新城はややモレマに割って入られたかたちで大外を回る。
腰を上げた最終スプリントに入ったところで、脚を使って追走集団からジャンプしたゲルツは力尽き脱落。
絶好のポジション取りをしたモレマが先頭に立つ。
ウリッシを新城がそれを追うも前を捉える程の爆発力はなく、モレマがそのまま押し切り優勝。
優勝タイム:3時間53分40秒
平均時速:37.0km/h
スプリント力でいえば残ったメンバーの中ではウリッシが有力と思われたが、今年のツール・ド・フランス総合7位、過去含めてツールのTOP10フィニッシュ3回を誇る実力者モレマの位置取り、勝負強さはさすが。
勝ったモレマは、チームメイトのアシストに感謝するとともに、ウリッシにスプリントで勝利したことは『驚きだ』とコメント。
これが勝ちを手繰り寄せることの出来る、トップレベルの選手の力だと再認識させられました。
ちなみに新城はレース後に前輪を見たらがパンクしていたと明かし、『なんか重いなぁと思ったら脚が重いわけじゃなくて自転車が重かった』と、周囲を驚かせていた。
優勝を狙える実力と展開だっただけに久々の日本人の優勝とならず残念でしたが、唯一先頭争いについて行き、大いに見せ場を作って日本のファンを沸かせてくれました。
来年はランプレ・メリダに移籍しますが、ランプレはちょくちょくグランツールでも穴を空けてステージ優勝をさらうイメージなので、幸也のステージ勝利に期待したいですね。
実際に総合系のエース、ピエール・ローランのアシストに徹することが多かったユーロップカーよりも、ランプレの方が自由が与える機会は多そうだし、うまく逃げに乗る等出来れば、展開次第では十分優勝の可能性はあると思います。
表彰式では母国オランダのナショナルカラーにカラーリングされたバイクでお決まりのポーズ!!
今年のジャパンカップは前日のクリテリウムを制した別府史之に続き、連日の勝利を飾ったトレックチームのための大会だったと言ってもいいかもしれませんね。
今年のジャパンカップが終わったばかりなのに、今からもう来年の大会が楽しみで仕方ありません。
「まだロードレースを生で見たことがない」という方は是非現地を訪れていただき、世界のトップクラスの選手達の走りを肌で感じてみてください。
レース観戦に来たことでロードバイクの魅力にはまり、実際にロードバイクを買ったというファンの方も多い様です。
ロードレースがもっと好きになること間違いなしです!!